恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



その翌日。

花澄は放課後、環と共にホームセンターへと向かった。

年末を控え、掃除道具などいろいろ揃えなければならないものがあるためだ。

……そして、買い物が終わった後。

ホームセンターの裏で、ベンチに座って休憩しながら……。

花澄は月杜兄弟との婚約を正式に辞退したことを、環に告げた。


「……え?」


環はそれを聞くなり、目を見開いた。

信じられない、といった表情で花澄を見る。

花澄は少し笑い、環を見た。


「もともと、私は美春さんの代わりだったしね。工房の資金繰りのこともあるし……」

「……」

「ずっと雪くん達とは『婚約者』だったから、ちょっと寂しい気もするけど。でも……」


と花澄が言いかけた、その瞬間。

環が花澄の背を攫い、抱き寄せた。

息も止まるほど抱きしめられ、花澄は思わず息を飲んだ。


「……っ、環?」


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