恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



環は無言で花澄の体をぎゅっと抱きしめた。

……体から伝わる、熱。

驚く花澄の唇に、環の唇が振ってくる。


――――全てを奪い取るような、熱く激しい唇。


唇越しに伝わる、情熱。

……嬉しい、という迸るような感情。

花澄はその熱さに心が溶かされそうになりながらも、心の隅で引き攣れるような痛みを感じていた。

こんなにも、環が好きなのに……。


――――ひたひたと歩み寄る、暗い予感。


月杜兄弟との婚約がなくなっても、自分の将来が変わるわけではない……。

家族や工房の未来を思えば、自分だけが環と幸せになるわけにはいかない。


先が見えない、恋……。


環は、これからのことをどう思っているのだろう。

聞きたいのに、……聞くのが、怖い……。

花澄は環の肩に頬を押し付け、体を震わせた……。



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