恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】

3.黒い衝動




<side.雪也>



12月下旬。

クリスマスを週末に控えた木曜日。

雪也は母に呼び出され、目黒の実家へと向かった。

週末に行われるクリスマスパーティの準備だろうと思っていた雪也だったが……。


「……そこにお掛けなさい、雪也」


リビングに現れた母の表情に雪也は眉を顰めた。

どことなく気落ちした、母の表情……。

小百合は雪也の正面の椅子に座り、膝の上で指を組んだ。


「あなたに、伝えておかなければならないことがあるのよ」

「……?」

「賢吾には昨日、話しておいたんだけどね。実は……」


小百合はそこで一旦、言葉を切った。

しばし視線を彷徨わせた後、再び雪也と視線を合わせる。

そして、言い辛そうに口を開いた。



「……先日。花澄ちゃんから、婚約辞退の申し入れがあったのよ」


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