アホすぎる俺と男前すぎる彼女との愛の奇蹟


こんなはずじゃ…なかったのになぁ…


ずるずるとしゃがみ込んで上を見上げると隙間から澄んだ青色が見えた。



それが余計に気持ちを落とし込む。

項垂れていると自分の腹から間抜けな音が聞こえた。

こんな時でも腹はすくらしい。



朝早くから母親のゆめこが作ってくれた弁当がリアルに頭をよぎったが、教室に置いてきてしまったことに気づき再び項垂れた。


「はぁ…腹へった」




一言呟くと止まらなくなる。




「…教室もどりたくねぇし」

「つか、ここから教室に戻れるかもわかんねぇし」


「普通田舎から遥々やってきた転入生には色々教えるべきだよなぁ?休み時間とかさぁ」


「俺なんにもわかんねぇのに。あんなにシラーっとされた後じゃこっちから話しかけづらいじゃんよ」


頭によぎるは明るく情に熱かった地元の馬鹿ども。

頭は弱かったけど底抜けに温かかった。


「寂しすぎる…」

「寂しいよーっ!!」

「誰か俺に愛の手を差し伸べてーっ!!」


寂しさのあまり空に向かって寂しさを訴えていたまさにその瞬間。



空から人が降ってきた





「うるせぇんだよっ?!さっきからビービーとわめきやがってっ!!!」


空から降ってきた長身でえらく男前な“彼”は、何故か鬼の形相をしていて目つきも危ない人だったけど。


俺にはそんなのどうでも良かった。

ただ話しかけられたことがすこぶる嬉しくて。


泣いているんだか笑っているんだかわからない顔で飛びついた俺に返ってきたのは飛び蹴りで。



神様が差し伸べてくれたのは愛の手ではなく、愛のとび蹴りでした。









これが俺と識(しき)との初めての出会い。


鼻血を出しながら見上げた空はただただ青かった。



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