ビー玉
「先輩は、どうしてここに?」







「ん、ちょっとな」







そう言って瞳を伏せるけんちゃんの長い睫毛に




二人でいるこの静かな空間に







どうしようもなくドキドキしてる自分がいて。













胸の奥のかけらが、音を立てて叫んでいる。













気付いて






早く、







自分の気持ちに。






























最初はただの“けんちゃん”だった。








ビー玉の瞳を見つける度に、今でもけんちゃんに捕われていることを思い知らされた。












だけどあたしの心臓は今、





目の前にいるこの人にだけ、切なげに震えている。









ビー玉の瞳をした“けんちゃん”じゃない。









いつもあたしを支えてくれているバスケ部の“沢村先輩”に。













けんちゃんと知り合っていたから、先輩を知ることができた。









先輩の中にけんちゃんを見つける度に、あの夏の日々にときめいた。












だけどきっと、あの過去がなくてもあたしは沢村先輩を――――
















暗い廊下で息を詰めてただ見つめ合うあたしたちは、






いつからお互いを呼び合っていたのだろう。




















抱きしめられた腕の中から、








夏の夜が始まる匂いがした――――

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