ビー玉
「その子がビー玉を見せてくれたんだ。



夕陽に透けてオレンジ色に光る、

綺麗なビー玉を。




あの頃、オレの居場所はどこにもなかったけれど、


その子といる時間は幸せだった。




恐いくらい、その時間が好きだった」













真っ赤な金魚をすくい上げておじさんに渡すと、そのまま先輩は続けた。












「大切なビー玉を割ってしまって泣いてるその子を慰めてあげたくて…




今みたいにこうして金魚を取ったんだよ。




ビー玉の中にいたのと同じ、



真っ赤な金魚をさ」









あたしの目に映る先輩の姿が陽炎のようにゆらゆらと揺れる。
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