海淵のバカンス


ゴトン、と何か堅い物が床に落ちる音で波人は目が覚めた。
白いシーツのベッドからダルそうに起き上がり、音のした方へ顔を向ける。
そして、現実味を全く帯びない姿で兎々がソファに倒れていた。
否、その側の床に酸素ボンベが落ちていた為、きっと兎々が地下の研究室から持って来てくれ、大概体力を使い果たしたのだろう、持ってくるもボンベを床へ落とし早々にソファへ倒れたのだと、逸史で理解が出来た。
地下は、この波人がいる階から三階程降りる。
端から見れば、正方形なこの空き家だが、実際は地下が二階まで存在し、長方形のような建物になっているようだ。


「海風さーん」
「黙れ」


互いに一糸纏わぬ姿で各々寝転がる様はさぞ滑稽で、兎々の機嫌も滑稽な程に下がっていた。


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