アウトサイダー
母は、掛け持ちしていた夜の工場のパートを辞めることができた。
池森さんの給料だけでもやっていけたはずなのに、食品加工会社の仕事を辞めなかったのは、母にもまだ警戒心があったからだと思う。
収入を失うことの怖さを、誰よりも知っていたから。
そして、母はすぐに籍を入れようとはしなかった。
きっとひどい経験のせいで、慎重になっていたんだ。
私たちは、幸せというものに慣れていなかった。
「コウさん、お風呂どうぞ」
池森さんの事をお父さんとは呼べなかった。
正式にはまだ父ではなかったし、父という存在そのものに恐れをなしていたのかもしれない。