アウトサイダー

「仕事を、辞めさせてください」


やっとのことで声を絞り出した時、涙がポロッとこぼれてしまって、慌てて拭った。


「紗知、どうした?」

「いえ。すみません。辞めさせて、ください」


私は震えながらもう一度その言葉を口にした。


「彼氏か? 彼氏が辞めろと言っているのか?」


少し前に、結婚の報告はしていた。
だけど、仕事は辞めないと言ったばかりだったのに。


「いえ、私の意志です。すみません、ご迷惑を……」


はぁーっと大きく息を吐き出した永沢さんは、自分の髪をグチャッとかきむしった。


< 265 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop