アウトサイダー

「それなら、どうしてそんなに辛い顔をしている。
どうして、泣くんだ?」


永沢さんの言葉に、なにも返すことができない。

だって、辛くて辛くて……自分が引き裂かれるような、そんな感覚さえあって……。

それでも、私はそうすることしかできないんだ。



「俺が守ってやる。全部話せ」


そんな優しい言葉をかけてくれる永沢さんに、私はただ首を振ることしかできない。

そんな私を見て、彼は重い口を開いた。


「俺は、前の妻との生活でいろんなものを諦めてきた。
俺が我慢すれば……目をつぶれば……そうしている間に、俺たちの間はもう修復不可能なほどの距離が開いてしまっていた」


永沢さんが驚く言葉を吐き出す。


< 266 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop