アウトサイダー

父への恐怖と今の状況が、永沢さんの言葉でシンクロして震える。

あの頃も、悪いのは私だと思っていた。
私と母のために身を粉にして働く父に、なにもできない自分が悪いと。
私がいるから、父はつらい思いをして働いているのだと。


だけどそこから逃れた瞬間、あの暴力は間違っているのだとわかった。
たとえ、私が悪かったとしても、だ。

力で解決できるものなどなにもないのだと、わかったのだ。


彬さんは……。


「紗知……今日は行ってくれ。俺も頭を冷やす」


そんな言葉が彬さんから漏れた時、やっぱり震えてしまった。


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