アウトサイダー

唖然とした。

父にまた殴られるのは、それはもう身の毛もよだつほど嫌だったけれど、それより太陽とお別れすることが痛くて仕方がない。


しかも、私たちの引っ越しは極秘裏にされて、私と母と役所の人以外、誰にも知らせてはいけないという事だった。

当然といえば当然だ。
だけど……。


「ねぇ、太陽は? 
太陽には言ってもいいでしょ?」

「ごめんね、紗知。太陽君にも……」

「そんな、ひどいよ。
太陽はずっと守ってくれたじゃん。
太陽がいなかったら私……」

「ごめん」


私の言葉を聞きながら項垂れてしまう母を、これ以上責めることなんてできなかった。


だって、母だって被害者なんだ。
母だって、やっと慣れてきた環境を手放さなければならないのは、辛いだろう。



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