光の花は風に吹かれて
ローズは空になったセストのカップを受け取ってテーブルに戻し、また椅子へと戻ってきた。

セストが視線を向けると笑顔になる。

記憶修正を施す前と変わらない。

「なぜ……?」
「セスト様、お話はまた後ででもできますから。もう一眠りしてください」

ローズはそう言ってセストにブランケットを掛けようとする。セストはその手を掴んでローズを見た。

「なぜですか?貴女はもう夢の世界に生きる王女ではありません。なぜ笑うのですか?なぜ私を……追うのですか?」

ローズはセストの手にもう片方の手を重ねた。

「セスト様の前では笑っていたいと、伝えたことをお忘れですか?もう少し頑張りたいと言ったことも。私の気持ちは変わりません」
「――っ、貴女の気持ちはっ!私が作り出した幻想なのです!」

セストが叫ぶとローズは緩やかに首を横に振る。

「私とお会いしてくれなかった理由は、それなのですね……でも、私の気持ちはもう夢の中にはないのです」

しっかりと、セストを見つめる琥珀色の瞳は揺らぐことはない。

同じ――リアがレオのために記憶を取り戻したいと願ったあのときと同じ光を秘めていた。
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