光の花は風に吹かれて
「私の中にもうあの夢がないことは、セストさんが1番よくわかっていらっしゃるでしょう?」
「えぇ。ですから、貴女はもう私に用はないはずです。それとも、利用された仕返しをしたいのでしょうか?」

ローズはセストの言葉を聞いて、少し目を見開いてから首を振った。

「それはもう“過去”です。セスト様が夢に出てくるようになった理由を知って驚いて、少し頭を整理する時間も必要でしたけれど……」

頭を整理する時間――部屋に籠もっていたときのことだろう。

「ずっと、セスト様との時間を思い出していました。夢ではなく、泉で実際にお会いしてからの現実です」

ローズはセストの手をそっと握る。

「私を助けてくれて、城にお世話になるようになってからもセスト様はとても良くしてくださって。放っておけないだけだったのかもしれません。でも、避けようと思ったらこの2週間のようにセスト様は上手に逃げることができます」

ローズの言う通り、最初からセストには彼女を見捨てるという選択肢があった。だが、それは――

「貴女の望むような気持ちから、そうしたわけではありません」
「そうですね。罪の意識からかもしれません。でもそれは、セスト様が優しいという意味でもあります。人は……もっとひどく、残酷になれるものなのですよ?」

一瞬ローズの瞳が揺れたが、その悲しみはすぐに消え、セストに向かって優しく微笑んだ。

しかし、セストはその温かさに耐えられなくなってローズの手を払う。
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