光の花は風に吹かれて
「そんな顔をしても私の意見は変わらないわ。貴女はあの側近に利用されたのよ?前科がある人間をそんなに簡単に信用するなんて“おかしい”以外にどんな言葉があるというの」

エミリーは持っていた扇をビシッとローズに突きつける。ローズはそれを手で払い、エミリーを睨んだ。

「セスト様は、レオ様とリア様のために危険を冒したの。エミリー、貴女はお父様やユベールお兄様がなさっていたことを、すべて知っているのでしょう?」

ローズは詳しいことは聞かされていない。

クロヴィスの話からルミエール城で権力争いがあったのだということは知っているが、その他は権力争いの一環でダミアンがいろいろと悪いことをしていたのだろうという予想くらい。ユベールのことだって癇癪持ちの怖い兄くらいの認識でしかない。

「お父様やユベールお兄様が正しくて、セスト様が間違っているというのなら、きちんと説明してくれなくてはわからないわ!」
「お父様やお兄様に非があるのは事実だわ。でも、だからといって――」
「ほら、エミリーだって認めているじゃない」

ふんっと鼻息も荒く、そっぽを向く。それがエミリーの怒りに更に油を注いだらしく、エミリーはバンッとテーブルを叩いて立ち上がった。

「だからといって!あの側近が“善”でもないのよ!第一、貴女はルミエール王国の王女で――」
「もう王女じゃないわ!」

ローズも負けじと立ち上がり、叫ぶ。

「貴女が何と言おうと、ルミエール王国第3王女はローズ、貴女よ!」
「私はもう王女なんてやめたのよ!」
「やめられるものじゃないの!」
「ユベールお兄様は王子をやめたのに、そんなのは不公平だわ!」

はぁ、はぁ――と、2人とも大声で叫んだせいで、肩で息をしている。
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