光の花は風に吹かれて
「わかったわ……」

しばらく睨み合い、そしてエミリーが低く唸るように言う。

「ならば、あの側近と結婚すればいいわ。王女という周囲の認識は変えられないけれど、ヴィエント王国へ正式に移民するとなれば、貴女は望みどおり“ルミエール王国”の呪縛から逃れられる」

エミリーは早足で扉へと歩いていく。

「エミリー!?」

ローズは慌てて廊下を進んで行くエミリーの後を追った。

「エミリー!待って、どうしてそんな話になるの?私は結婚なんて――」
「結婚“なんて”、ですって!?あの側近が本気だというのなら、当然のことでしょう!」

エミリーは彼女の手を掴んだローズの手を乱暴に振り払った。

「そうじゃないのよ!私は、少なくとも今は結婚を望んでいないわ」
「ローズ!そんな中途半端なことが許されると思わないでちょうだい」

エミリーの言いたいこともわかる。結婚という繋がりを持つ覚悟があるかどうかでセストを試そうとしていることも。

でも。

「中途半端じゃないわ。エミリーは恋をしたことがないからわからないのよ。セスト様だってそんな急に――」
「私が、急にどうかしましたか?」

その声にハッと振り向くと、セストが本を抱えて近くの部屋から出てきた。クロヴィスも一緒だ。
< 117 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop