光の花は風に吹かれて
「ちょうどいいわ。ヴィエント国王側近セスト・アルベス。貴方にローズと結婚していただきたいの」
「っ、エミリー!」

ローズはエミリーの腕を掴んだ。エミリーはそんなローズをチラッと見ただけで、すぐに視線をセストに戻す。

「セスト様、ごめんなさい。エミリーは勘違いしているのです。今の発言はお気になさらないでください」

ローズがセストに曖昧に微笑むと、セストは「はぁ……」とこちらも曖昧な返事をする。

「クロヴィスも、エミリーを止めて」
「そう、おっしゃられましても……」

クロヴィスはローズの懇願を無表情で受け止め、眼鏡をクッと指で持ち上げた。

「ローズ、少し静かにしてくださる?セスト・アルベス、勘違いなどではありませんわ。私はきちんと事実を受け止めた上で申し出ているのです」
「エミリー!」

ローズが腕を引っ張っても、エミリーは動かない。体格差なんてほとんどないのに一体どうなっているのだ?

「それで、貴方のお答えは?」
「セスト様、エミリーの言うことは本当にお気になさらないで。もうお仕事に――」
「ローズ様がそれを望まれるのであれば、私は特に異議はありません」

ニッコリと……微笑んだセスト。

エミリーは眉を顰め、ローズは口を閉じることも忘れて彼を見つめる。クロヴィスだけが、セストの後ろで1ミリも動かない。

「沈黙は肯定、ということでよろしいでしょうか?ルミエール女王様のお許しも出ましたし、ローズ様、私と結婚していただけますか?」

あぁ、これは夢だろうか――?
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