光の花は風に吹かれて
Act.4:蕾を吹き飛ばすこと、お許し下さい。
闇人――遥か昔、その特殊な能力で大陸の秩序を保っていたと言われる少数民族。

炎・水・風の呪文を無効化する唯一の呪文を持つ彼らは大陸内では中立的な立場であった。

天候を操る能力は集落の長のみに受け継がれたが、日照りや大雨が続いて命に危険が及ぶほどになるときしか使われたことはなかった。使うには生け贄を必要としたからだ。

彼らは総じて平和主義だった。

ところが、光属性が表れるとその均衡はたちまち崩れていく。

光が闇を照らすことは自然の摂理――優劣を持たないはずの属性遺伝は、光属性に対して“劣性”だった。

光属性へと取り込まれ、制限の増えていく生活の中で、純粋な闇属性を残すために隠れるように暮らしていた闇人だが、その数は確実に減っていった。

やがて光属性の人間たちはルミエール王国を建国し、闇人は更に南の海沿いへと追いやられる。北には天敵とも言える光属性が、南はどこまでも青い海。

ルミエール王国を抜けられた闇人は何人いたのだろう。

長い歴史の中で何度か大きな紛争も起こり、その度に闇人の人口は急激に減った。

そして27年前、1番記憶に新しい紛争にて闇人は滅びたと記されることとなる――…
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