光の花は風に吹かれて
――側室と王女たちのみ出入りを許されている庭で、ローズは毎日のように泣いていた。

自分の暮らす世界が窮屈な場所だということは理解していたし、それでも良いと思っていた。与えられた世界でどう生きていくか、ルールの中に見出す自由。それだけでも恵まれているのだと……

多かれ少なかれ、人々は誰もがそうしている。ローズが王女で、その制限が少しばかりきついだけで。

だから……愛せると思った。

父が、母が、ローズを愛してくれるように。

最初は“与えられた”ものでも、そのうちそれがローズのもの、そして夫のものとなるのだと――信じていた。

それが簡単に壊れるものなのだと知ったとき、涙が止まらなくなって……我慢することも忘れて泣いた。

そうしているうちに、もう1つの真実を知った。

ローズは最初から“人形”だったのだと。

世界が壊れたのではない。人形が壊れただけなのだ。

利用価値のなくなったローズには声を掛けることすら時間の無駄だと言うかのように、誰もローズを見なくなった。

夫も、父も、簡単にローズを捨てた。

「可哀相に……花を見る目がない方のもとへ、嫁がれたのですね――…」
< 73 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop