金色のネコは海を泳ぐ
「痛い、痛い!」

バラルディ診療所の研修室に、アリーチェの叫び声が響く。

「痛いってば!!」

ドスッ、シャッ、ゴッ――

「ぐっ」

痛みに耐えられなかったアリーチェに突き飛ばされ、ローラーのついた椅子は勢い良く走り出し、壁にぶつかって、その衝撃で椅子からも落ちた。

ルーチェは綺麗な星を見た――…雨の日の、昼間に。

「い、痛い……」
「にゃぅん」

ルーチェは強打した頭を撫でてから、パントマイムのように壁に手をペタペタとつきながら立ち上がった。机の上で2人の様子を見ていたオロは、憐れみのこもった琥珀色の瞳でルーチェを映している。

「もう!先週からちっとも進歩してないじゃない!こんなに痛いのを我慢してトラッタメントを受けるなら、いっそ安らかに眠りたくなるわよ!」

アリーチェは両手を腰に当てて、大きな声を出した。診療所で発するには些か――いや、かなり――不適切な言葉だと思われる。
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