金色のネコは海を泳ぐ
「全然わかってないわよ!」

アリーチェは鼻息も荒く、怒鳴り散らす。ルーチェはビクッと身体を震わせた。

「もう!いくら学校では模型を使うからって、こんなのありえない!」

学校と研修の最大の違いは、物から人間へと呪文を施す対象が変わること。

物は痛いとは言わない。たとえ激痛だったとしても……

人間は、呪文を使うときに“気”というものを使う。医療用語では“チャクラ”と呼ばれるそれを媒介としてトラッタメントは行われるのだが、そのチャクラの波長――言ってみれば振れ幅のようなもの――をできるだけ小さくしないと刺激が強くなってしまって痛いのだ。

元々チャクラの波長が弱い者もいて、あまり意識せずに呪文治療をうまくこなせる者もいるのだけれど、ルーチェはどうやら波長が強い方らしい。

呪文習得に時間がかかったのもおそらくそのためだ。とにかく傷や病を“治す”ということに集中して力任せに呪文を使っていたせいで、逆に傷口を広げる結果となっていた。

とりあえず、傷が治せるまでには波長の調整ができるようになったらしいが、まだ人間には刺激が強過ぎるらしい。

「もう絶対にお姉ちゃんの実験体になるのは嫌よ!今日のお給料は来週1週間のお風呂掃除当番交代だからね!」
「そ、そんなぁ……」

ルーチェの担当は診療所の清掃なのに。お風呂場だけのアリーチェよりも労働量は多いのに。更に増やすというのか。それも1週間も!

「にゃー」
「はい、決まり」
「うぅぅ」

オロがアリーチェに賛成し、ルーチェの意に反して民主主義が成り立った。
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