金色のネコは海を泳ぐ
突然、歩みを止めたルーチェをジュストが振り返る。

冷たい風が吹いて、2人のつないだ手が温かいことを教えてくれる。

「ルーチェ?ダメだった?僕、また間違ったの?」
「……っ」

ルーチェは言葉が出てこなくて、首を横に振った。

「でも、ルーチェ……泣いてる…………」

また、だ。

泣くつもりなんてないのに、涙が止まらない。

でも、今は理由がハッキリとわかる。

ジュストが離れていくのは嫌だ。ジュストが“好き”の意味に気づいたとき、隣にいられないことを考えたら苦しくて。

だから、違うと言い聞かせていたのに。

こんな片想いが、初めての恋だなんて思わなかった。

「ルーチェ、泣かないで?」

ジュストは優しくルーチェを引き寄せる。

こんな風に触れられたら、期待してしまう。ジュストの“好き”はルーチェと同じかも、と。

ルーチェはジュストの背中に手を回し、胸に顔を埋めて静かに涙を流した。

「ルーチェ?」
「ジュストっ……」

あぁ、ルーチェは……ジュストのことが、好きだ――…
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