金色のネコは海を泳ぐ
「ダメだってば!」
「にゃぁぁん!」

初夏――春が終わって日差しも強くなってきた、ある晴れた日の昼下がり。

2人――1匹と1人――は図書館の前で言い合いをしていた。

と、いうのも……

ルーチェは国家試験の勉強のために必要な資料を借りに来たのだ。普段は家に揃っている図鑑や辞典で事足りるのだが、昨日の夜にやっていた問題集に王家専属クラドールの試験がついていて調べたいことができた。

実は、ルーチェは筆記試験ではトップクラスの成績なのだ。実技がボロボロだったので、あまり注目されないのが悲しいが……昔から本が好きで、家にある本を片っ端から読んでいたというのも成績優秀な理由。

卒業試験も引っかかっていたのは実技だけで、薬の調合もよくできていると先生に褒められたくらいだ。

とにかく、筆記試験だけならば今すぐにでも国家試験を通れるくらいの知識は詰め込んである。それで、王家専属クラドール用の試験問題に手を出してみたわけだ。

しかし、やはりレベルが格段に違うというか……実際の症例を出しての治療法案や過去に流行った病など、時事問題も多くて所謂“即戦力”を求められているのだと感じた。

それで図書館に過去の記録を見に来たのだけれど、もちろんネコは図書館に入れない。

「もう、なんでついてきちゃうのよ!」
「にゃぁ!」

家を出る時だってついてこようとするオロをわざわざ部屋に閉じ込めてきたというのに。一体どうやって出てきたのだ?
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