金色のネコは海を泳ぐ
ルーチェはベッドサイドの小さな灯りを点けて、新聞の文字を追っていく。ルミエール王国についてのニュースはあったとしてもそんなに大きくは載らないだろう。

ルーチェは国外の情報ページを開き、“ルミエール”という文字を探した。

それは、案外すぐに見つかった。国外のニュースにしては大きく取り上げられている。

『ルミエール王国政権交代』

やはり、国王が代わったというニュースはルーチェの記憶通りだったのだ。

『ユベール第一王子の王位継承権破棄により混乱を極めたルミエール王室は、本来の王位継承の儀から2ヶ月遅れで式典を開催した。今回、王位を継承したのはエミリー第四王女で、第18代サラ女王以来の女性君主が誕生したこととなる。エミリー女王は今後の国内政治や外交政策について大幅な改革をすることを掲げており――…』

ルーチェは細かい文字を追いながら目を擦った。それから長々とエミリー女王のマニフェストやら、ルミエールの政治体系の話などが書かれていたからだ。政治の話は興味がないのであまり長いと眠くなってしまう。

オロのことを考えていてなかなか眠れそうになかったので良い兆候とも言えるが、そのオロの秘密について迫れるかもしれない情報を逃す訳にもいかない。

だが、『知られざる王室の確執』という見出しに辿り着く頃にはルーチェの瞼は半分下がっていて。意識が夢の中へ引きずり込まれそうになっていた。

『正妃イザベル様の息子、ロラン王子と――――の息子、ユベール王子との確執は公に語られたことはなかったが――――だが――ロラン――起こした――――もう――の王子――――――ジュ――…』

「……と、おう……じ…………」

クシャリ、と微かに紙の音が聴こえて……ルーチェの意識はそのまま夢の世界へと沈んでいった。
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