金色のネコは海を泳ぐ
『ルーチェ』
「う~ん……」

自分を呼ぶ声に、ルーチェはもぞもぞと布団の中にもぐりこんだ。

『ルーチェ!』
「んー」

あぁ、もう。なんで今日だけ起こしにくるのだ?ルーチェはきちんと毎日目覚ましをかけていて、音が鳴ればすぐに起きられる。

『ルーチェ!!』
「もう!お母さんってば、うるさい!大体、まだ目覚まし鳴ってないで――あれ?」

思いきり起き上がってドアの方に向かって叫んでいた途中でルーチェは首を傾げた。ルーチェの部屋のドアはきっちりと閉まったままで、ブリジッタの姿もない。

ルーチェはぐるりと部屋を見回したけれど、アリーチェもグラートもいない。

「ん?」

ここのところ、自分を呼ぶ少年の夢を見続けるせいか現実と勘違いしたらしい。時計を見るとまだ朝の5時。いつも7時に起きるルーチェには早すぎる。

「はぁ……もう」

ため息をついてもう1度寝転がると、ルーチェの目の前にドアップでオロの顔があった。琥珀色の瞳がくりくりしている。

「オロ、起きたの?」
『うん』
「そっか。もう少し寝たら?まだ5時だよ」

ルーチェはふあっと大きなあくびをして目を瞑った。

枕元の目覚まし時計の針の音が、やけに大きく聴こえる。
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