金色のネコは海を泳ぐ
「原因として、思い当たることはないの?私は姿を変える呪文は変化の呪文しか知らないよ……」

ただ、あれは自分自身にかける呪文だったと思う。しかし、他人にかけることもできるのか調べてみる価値はあるかもしれない。

『わからない。僕、ずっと身体は寝てたんだ。チャクラを使えるようになったのもネコになってからだよ』
「うーん……」

ルーチェは唸った。ルーチェはクラドールが使う以外の呪文は学校で習ったくらいの基本しかわからない。クラドールの呪文と普通の呪文――攻撃や防御などいろいろと種類がある――は違う。

トラッタメントは“波長の調節”が大切になってくるが、普通は呪文を使う場合の力の強さはチャクラの濃度×波長の強さになる。つまり、どちらも大きければ大きいほど呪文の威力は大きくなるのだ。

『ルーチェ……僕、人間に戻れる?』

不安そうにルーチェを見上げるジュスト。

ジュストはルーチェを頼ってくれている。それに、今までたくさんルーチェを助けてくれた。だから今度はルーチェがジュストに手を差し伸べるときだ。

「大丈夫!きっと戻れる。私が戻してあげる!」

ルーチェは力強く言って、ジュストに笑いかけた。少しでも元気になってもらいたくて。

すると、ジュストはパッと表情を明るくさせてルーチェに飛びついた。

『ルーチェ、大好き!』
「ちょっ!?だから抱きつくのはダメなんだってば!」

そうやって、じゃれ合いながら。

絶対にジュストを人間に戻してあげよう――ルーチェはそう心の中で誓った。
< 86 / 268 >

この作品をシェア

pagetop