背中ごしの恋
「――!」

音もなく、耳の下辺りから差し込まれた掌の感触にびくりと目を開ければ、そこにはワイシャツの胸元を肌蹴させた漣さんがいた。軽薄に口元を歪めた彼は保護者の顔から一変して、追い詰めた獲物を弄ぶような眼で私を見つめる。


「アノ時の声、わざと俺に聞かせてたんだろ?」



その言葉に、カッと、全身が熱くなる。私の頬を撫でながら、親指が唇の輪郭をなぞっていく。
< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop