大人の関係
荷物を持って降りてくると奈津はもう玄関で待っていた。


「私の車移動させて貰わなきゃいけないから、一度鍵を渡しに家に寄らせてね」
「あ、それならレンタカー私が運転しますよ」
「そう。助かるわ」
「よかったら先に出てて下さい。昨日お伺いしたから場所も分かるし。忘れ物チェックしてから行きます」

「・・そう。じゃあ、そうするわね。気を付けて来てね」
最初少しためらっていたが、手を振り玄関から出て行った。


奈津なりに気を使ってくれたのが分かり申し訳ないような、ありがたいような複雑な気分だ。

不倫旅行の最中、急遽妻のもとに帰った男に置き去りにされてしまった女。
俯瞰で見るとなんて情けない状況なのか。

それを一人きりにしては心配で、一緒に行動することを提案してくれたのだろう。

だが少しの時間、二人で甘い時間を過ごしたこの空間を後にする余韻くらいは与えてくれたのだと思う。
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