恋の訪れ

「大事なんです、これ」

「大事っつっても、もー食えねーじゃん」

「……」


そんな事を言われたら悲しくなった。

そうだけど、そうなんだけど。

でも、これは、あたしの中で大切なものなの。

誰がくれたのかも分かんないけど、今ではあたしにとって必要な物。


だから不意に涙が頬を伝った。流そうと思って流した涙なんかじゃない。

ただ気づけば頬に伝ってた。


「買ってやるから、これは捨てろって」

「ダメ!!ダメなの。これじゃなきゃダメなの!これじゃなきゃ意味ないの!!」


咄嗟に叫んでしまった。なんでこんなに自分でも叫んだのか分かんない。

頬に伝う涙と、瞳が潤んでる所為で昴先輩の表情はよく分からない。


だけど、なんとなく分かった。

昴先輩は、面倒くさそうにしてた。


そうされる事くらい分かってるけど、ほんとにこれじゃなきゃダメなの。


「お前が大切なのは分かる。でも落ちたもんは食えねーだろ。諦めろ」

「……」

「つか、お前もう帰んぞ。調子悪かったんだろ」


引かれる腕からポロポロと金平糖が手から滑り落ちて行く。

悲しそうに落ちて行くから、またあたしの瞳から涙が伝った…


そして昴先輩にされるがままに気づけばタクシーに乗り込んでた。
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