恋の訪れ
鞄の中から携帯を取りしたあたしは、サクヤ先輩にコールする。
数秒した後、プツリと切れると、
「莉音ちゃん?」
なんて明るい声が聞こえる。
「今、大丈夫ですか?」
「うん、いいよ」
ザワザワとする声がサクヤ先輩の声と混じって聞こえてくる。
「あ、忙しいのなら後でいいですよ」
「いや、大丈夫。ところで何かあった?昴に襲われなかった?」
クスクスと笑うサクヤ先輩に呆れる余裕なんてない。
「大丈夫です」
「ふーん…で?」
「あの昴先輩との交換条件ってなんですか?」
「うん?交換条件?」
「はい。昴先輩が、サクヤ先輩に借りがあるから教えるだけって言われて…」
「あー…別にたいしたことないよ。ただの女がらみだから」
「はい?」
「あ、もしかして莉音ちゃん、昴に惚れちゃった?」
「いえ、ないですね。教えてもらうのには助かります…昴先輩見掛けによらず頭いいし」
「だろー、アイツすげーんだよ。帰国子女だかんな」
「へっ!?」
「あれ、聞いてねーの?」
「はい。初耳で今まさにビックリしました」
「だから教え方もピカイチ」
「はぁ…」
「まぁ、でもさ。これで莉音ちゃんも英語力伸びるし、俺達と友達になれたし一石二鳥じゃね?」
「いや、良く分かんないんですけど、その意味が」
電話越しから聞こえるサクヤ先輩の声に思わずため息を吐き捨てた。