恋の訪れ
電話を切った後、テスト用紙を見つめながら浮かんでくるのは昴先輩の事。
「帰国子女…って、嘘でしょ?」
ありえない。
あの、悪魔が帰国子女だなんて…
世の中、凄い事もあるもんだ。
その日はいつも以上に英語に没頭しすぎた所為か、記憶もないまま眠りについてしまっていた。
「…莉音おはよ。どうしたの?いつもより遅いじゃない」
朝、リビングに行くとママがそう言ってテーブルの上にこんがり焼けたパンを置く。
「うーん…遅くまで勉強してたから」
「はっ!?アンタ勉強してたの?」
勢いよく飛び交ってくる大きな声に眉を寄せる。
既にパンを食べているお姉ちゃんは、ビックリした表情をあたしに向けた。
「悪い?」
「悪くないけど、そー言うのやめてくれる?嵐がきそうだから」
「来ないし」
「嵐じゃなくても大雨降りそうだからやめてよね。あたし今日大事なイベントがあるの」
「ふーん…」
「せいぜいアンタ事故らないように気をつけなよ」
相変わらずムカツクお姉ちゃん。
やっぱ頼まなくても良かった。
今だから思う。
悪魔の方が優しい。
…ムカツクけど。