恋の訪れ
「もー、香恋やめなさい。そんな縁起でもない事…」
ママの困った声が耳を掠める。
「だってママ聞いてた?莉音が勉強だって!マジ笑えるんだけどー」
「莉音だってする時はするわよ。ね、莉音?」
「…うん」
する時はするって、正直しないんだけど今回はヤバイのマジで。
まぁ、今に始まった事じゃないけどお姉ちゃんはホントに、性格悪すぎ…
朝ごはんを食べたあたしはそそくさと制服に着替え、家を出た。
「りーおんっ!」
もうすぐ正門って所でバチンと叩かれた背中に痛みが走る。
覗き込むように笑みをもらしてきた真理子が怖い。
「お、はよ」
「おはよーん。ね、ところでどうだった?」
「何が?」
「何がって、昴先輩だよ」
フフフ、と笑う真理子がやっぱり怖い。
「別に何もない」
「そんな事ないでしょー。一つ屋根の下で女と男が寄り添って勉強だなんて。あたしだったら身体捧げちゃうかもー」
「もー、やめてよ真理子!ただ教えてもらっただけ。何もないし」
「でもキュンキュンしたでしょ?」
「しない」
「はぁ!?莉音って、頭おかしいんだね」
「はっ?何それ!」
「だってあんなイケメンの先輩に教えてもらってトキめかないなんて信じらんない」
真理子は不満そうに声を漏らした。