恋の訪れ
考えられるのはただ一つ。
お姉ちゃんは大学の中でも有名だ。
ま、その有名って言うのはただの美人でって意味。
あんな性格が悪くても、外に出ると全くの別人だ。
いや、そうじゃない。
あたしに対してだけ、お姉ちゃんは偉そうなの。
あたしとお姉ちゃんが姉妹って事は、この学校で真理子しか知らない。
だからここでお姉ちゃんと出会ってもお互い何も話さないんだけど…
なんで昴先輩と?
昴先輩はお姉ちゃんが好きなんだろうか。
あんなに笑ったりして、なんなの?
聞きたいけど、そんな事聞けないもどかしさが、なんとなくあたしを苛々させてた。
「もー、莉音の所為で袖が濡れちゃったよー…」
げんなりした声で戻ってきた真理子は袖を触りながら椅子に腰を下ろす。
「ごめん、真理子」
「なにボンヤリしてたのよ」
「ごめんね、ほんとに」
「まぁ、乾くからいいけどさ、気を付けてよね」
「うん…」
「莉音、早く食べるよ。時間なくなっちゃう」
「うん」
真理子はフワフワの卵が乗っかったオムライスを嬉しそうに頬張る。
だけど、あたしはサンドイッチどころか昴先輩の事が気になって仕方なかった。