綿菓子と唐辛子


…10分くらい歩いて、アパートに着いた。

ケーキ買ってきたは良いけど、ヒメは出てくれるのだろうか。

ポストの中をチェックして、そのまま階段をあがる。
手に持ったケーキは、ひんやりとしていた。

カンカン…と、静かに金属音が鳴る中で、ゴトン…と物音がする。


「…?」


気になりつつも階段を上る。
ポケットから鍵をとりだして、上がりきったとき。

そこには、俺が会いたい人がいた。



「…ヒメ………?」


玄関先で、じっと待っている。

しかも、俺の玄関先。
鞄なんかも、そのままで、自分の部屋にも入らずに待っていたらしい。

つーか、なんで……?


「なにしてんの、ヒメ……」


俺を、殴るために待っていたのだろうか。

そんなに切れられるほど、俺なにかしたっけ?


「ヒメ、なにしてんの」


黙ったまま、ヒメは動かない。
顔は下を向いてるし、俺の問いかけにも答えない。


「…ヒメ、いいから入りなよ。そんなとこいてもあれだし。ね?」

「…」


ヒメ………?







< 67 / 265 >

この作品をシェア

pagetop