綿菓子と唐辛子
…10分くらい歩いて、アパートに着いた。
ケーキ買ってきたは良いけど、ヒメは出てくれるのだろうか。
ポストの中をチェックして、そのまま階段をあがる。
手に持ったケーキは、ひんやりとしていた。
カンカン…と、静かに金属音が鳴る中で、ゴトン…と物音がする。
「…?」
気になりつつも階段を上る。
ポケットから鍵をとりだして、上がりきったとき。
そこには、俺が会いたい人がいた。
「…ヒメ………?」
玄関先で、じっと待っている。
しかも、俺の玄関先。
鞄なんかも、そのままで、自分の部屋にも入らずに待っていたらしい。
つーか、なんで……?
「なにしてんの、ヒメ……」
俺を、殴るために待っていたのだろうか。
そんなに切れられるほど、俺なにかしたっけ?
「ヒメ、なにしてんの」
黙ったまま、ヒメは動かない。
顔は下を向いてるし、俺の問いかけにも答えない。
「…ヒメ、いいから入りなよ。そんなとこいてもあれだし。ね?」
「…」
ヒメ………?