和風シンデレラ 〜煙管を掲げて〜
紅い口から流れる煙が、目の前で正座をしている幼い子の顔を包みこむ。
『用はなんだい』
百合の花が描かれた椅子に座るあたしを
上目遣いで見つめる禿の梓那(しな)。
「カーノン様の家来がお見えになりやした。冷羅姉さんに、お会いしたいと」
梓那はそう告げると、手をついてお辞儀をし、部屋を出て行った。
煙がそれほど嫌だったのか
伝言した褒美の飴ももらわずに出て行きやがった。
煙管の灰を皿に落とした。
……カーノンの家来。
王の家来があたしに何の用だ?
歪みかけた顔をむりやり整わせ、
鏡台の前に座る。
金具がついた引き出しを開け、
真っ赤なバラと金色の鎖がついた簪を取り出し、結われた髪の毛にそっと刺す。
ここは滝檎(たきご)という町である。
年はカーノン家の祖先の始まりから
313年経ったところ。
滝檎はわが国の中心部であり
政治も貿易も工場も
すべて滝檎に集中している。
ゆわば首都である。