そしてキスからはじまった
それからも短編小説や絵の翻訳の仕事も貰った。
その中には恋の話もあって恋愛経験の少ない私…
今、切ない恋をしている私は
夢のような恋の物語は自分がヒロインのように感じながら訳した。
まるで自分の恋が成就するような幸せを感じながら…

そんな仕事を支社長に見せるのはいつも以上にドキドキした。
私はいつもの喫茶店でケーキと紅茶を御馳走になりながら出来上がった原稿を見せていた。

原稿を読む彼を上目遣いでチロチロと見る。

原稿を読み終えた彼は
ふーと、一息はいた。
「短い間に随分上手に訳せるようになったね。
ジュリアちゃん訳によってより若い女の子の気持ちがよくわかる。」

そして彼は自分の鞄から一枚のファクスを出した。
「これなんだけど…日本の本社から送られてきてね。
…ジュリアちゃんにどうかと思って…
この機会に自分のオリジナルを書いてみてもいいんじゃないかと思うんだ」

『新人作家募集!』
そう日本語で大きく見出しを書いたその紙には
長編、短編を問わず色んなジャンルの小説を募集するもので
ただ条件はどこにもプロの作家としてデビューしてないこと。
日本語で書かなくてもいい…そんな事を書いていた。




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