そしてキスからはじまった
日付けが変わる頃

外に車が止まる音がした。

「しおん…気をつけて」

日本語?
少し笑ったようにきこえる
甘ったるい女の人の声…
アパートのすぐ下で聞こえた

カーテンの隙間から下を見ると女の人に支えられてヨタヨタ歩く紫音が見えた。

酔っている…あの人と飲んでいたの?

赤いスポーツカー…あの人の車?
車のことなんて知らないけどとっても高い車だろう。

ちょうど下を通った彼女は高そうな有名ブランドの服を着こなす綺麗な人

部屋まで来るの?私はどうすればいいの?キッチンの隅に隠れた。

ガチャと音がしてドアが空いた。入ってきた紫音の後ろを見た。

何も見えない…

紫音は玄関を入ったらすぐドアを締めた。

良かった

下で別れたみたい

「お帰りなさい…紫音…」

なにも言わず私の横を通り過ぎた。

アルコールの匂いとともに女物の強い香水の匂い…

あの綺麗な人の匂い…

キッチンで水を飲む紫音の口には拭き取りきれなかった赤い色

キスをしたんだ…

今朝はいつも通りの彼だったのに



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