そしてキスからはじまった
夕方の診察まで時間を貰った私は美国出版のコンテストに応募するために書き終えた。
私の物語…馬鹿で取るに足らない私の…
コンテストに優勝しようとかそんなことは考えないけど
何か私の生きた証しを遺したいのかもしれない

私は夢の中の人の事も書き、私の愛する人、紫音には名前は書かないけど助けてくれてありがとう。幸せになって下さいと書き
宝物には一緒に生きれなくてごめんね。守ってあげれなくてごめんね。愛してると…書いた。

私はまとめた原稿を病院の近くの郵便局から出版社に送った。

ひとつの大きな事を終わらせたそんな達成感を久しぶりに感じた。


私は今年最後の診察を受けるために産婦人科の待合室に腰を下ろした。
待合室は今年最後のせいか診療時間が終わる時間になってもまだ何人か待っている状態だった。

前に座った人は私と同じぐらいだろうか?少し年上だろうか?
大きくなったお腹を隣りに座る男性が愛おしそうに撫でる…見つめ合い微笑みあう二人が羨ましい。
いつも外来の診察が終わった後で診てもらってたから他の人をゆっくり見なかったからそう思うのかな?
私も紫音に愛されてたなら彼女のように幸せそうに笑ってられたのかな

そんなことを考えてると「ジュリア、診療よ」看護師のアマンダに呼ばれた。

「気を付けて」と優しく診察室に通された。

アマンダはおしゃべりだけど裏表のないいい人だと思う。

女医さんに超音波の画面を見ながら説明を受けた。

「これが赤ちゃん、元気に動いてる。問題ないわ。性別は知りたい?」

はいとうなづくとにっこり笑って
「女の子ね。きっと可愛い子ね」
私はお腹に手を置いて幸せな気分になった。


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