そしてキスからはじまった
コンコンと2回ノックして事務所に入った。
事務所の机に座った女は俺が辞める時よりもやつれている
さっき、休憩室で聞いた話だと何か本社の方でトラブルがあってここも潰れるかもと話していた。

「紫音!良かった、来てくれて」満面の笑みを浮かべて椅子から立ち上がった女に

「給料を受け取りにきただけなので」と冷たく応えた。
「そ、そうね。ご苦労様。」としぶしぶ封筒を差し出した。
「ありがとうございます。お世話になりました。」と頭を下げてさっさと事務所から出ようとした。

「待って! 紫音この後、時間ある?私と一緒に「すみませんが約束があるので」」

女が言い終わる前に断りを入れた。のんびりしてて抱きつかれても困る。
この女は仕事終わりに抱きついてくる。
俺だけではなく他のバイトにもお疲れ様の挨拶だと言われたら俺だけ拒むことは出来なかった。

風呂入るまで香水臭くてまいったな。

もう働いてないんだしと
「では失礼します」とさっさと事務所を出てきた。

事務所を出たところで「紫音!来てたのか?」と声を掛けられた。
「ああ、給料を受け取りに。ショーン、お前にも世話になったな」
「…世話なんかしてないよ」ショーンが俯いてしまった。ショーンらしくない
「ショーン?」

「紫音、この後は何か予定ある?」
「ああ、親父に会いに行こうと思ってる」
「えっお父さん、アメリカじゃなかった?」
「こっちに来たときに具合が悪くなったみたいで、リヨン病院に検査入院してるから」

「そうか」
ショーンは何か考えて
「紫音、話したい事があるんだ。時間、作ってもらえないか?お父さんの見舞いのあとでも連絡もらえないか?」
「分かった。連絡する。」
「ありがとう。待ってる」

ショーンがなんか必死な気がする。
どうしたんだろう?ショーンはいつも明るくてあの女の命令にも笑って従ってた

あの女と関係あるのだろうか?

俺は病院に向かった。
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