そしてキスからはじまった
ごめんなさい。紫音・・もうすぐフランスから日本に帰る予定だったのにこんなことになって

彼女が言うように私がここにいたから・・どこかもっと遠くにいけばよかった・・

彼女は邪魔な私がまたあなたのそばにいると勘違いしたんだ、やっといなくなったと安心してたのに・・



「ジュリア、風邪ひくよ。部屋にもどりなさい。」

「先生・・か、彼に一言お礼だけでも言いたくて」

ふーと溜息をついて彼は今夜は眼を覚まさないよ、お礼は明日でも言いなさい。と先生は私の肩を抱いて立たせた。

夜中か早朝にまた来よう。誰にも気付かれないように…

そう思って病室を出ようとした

「ジュリア」かすかに声が聞こえた。紫音が目を開けてこっちを見ていた。折れてない左手を私の方に伸ばしてまたジュリアと呼んだ。

駆け寄ってその手を取りたい…。でも私にはそんな事は出来ない。

「知り合い?」と耳元で先生に聞かれて

「…日本で少し」と小さくそう言うのが精一杯…

彼女がいるのにお腹の子供の父親だと分かると紫音に迷惑がかかる、助けてくれただけで充分幸せ

御礼だけ言って部屋に戻ろう。

「助けてくれてありがとうございました。怪我までさせてごめんなさい。」

私は頭を下げた。紫音はじっと私を睨んでいる。彼女があんな事になったのを怒っているんだろう。

「か、彼女さんはすぐ戻れるように話します。…私が足をすべらせだけだと言えば多分すぐ戻れると思います。」
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