そしてキスからはじまった
僕は暇をみつけて脇道から病院の中庭を見に来た。天気のいい日は子供たちはそこで遊んでいるようだから...
サラは看護師の後ろに隠れていた。僕が一緒に置いていったぬいぐるみと抱いて

よかった・・ここに置いてくれるのか・・

それからも様子を見に来た。しばらくは仲間に入れないようだった。

友達は出来ないのか?一人で寂しくしてないか?いじめられてないか?

自分が捨てたくせに・・迎えにくるっていつだよ。嘘つきな僕・・

麗美さんはきまぐれなお嬢様で男好きな人だった。人のものを取るのが好きな人でいろんな手を使って気に入った男を自分のものにしていた。でも手に入ると興味がなくなる。手に入れることで自分の魅力を再確認したいかのように・・

でもどうしてこうも彼女の思い通りに恋人たちは別れるのだろうか?思いは本物じゃなかったということだろう。

紫音もそうだと思った。日本人だし、僕のお父さんも日本人、信用できない。

お母さんをずっとほっといた。きっとフランスに来た時だけの女としてしか考えてなかったんだろう。

かわいそうなお母さん。お父さんを好きにならなければもっといい人生だったかもしれないのに・・

料理雑誌でコンテストの写真があった。グランプリを取ってにこやかに笑っている男・・

黒い髪、細身で背の高くトロフィーを持つ手は指が長く器用そうに見えた。

きっと僕が器用なのは彼の遺伝かと思った。頭がいいのもたぶん彼から受け継いだもの

お母さんを不幸にした男への恨みからか僕は紫音のことが初めは嫌いだった。

何でも持っている彼が・・僕は将来の希望も妹も捨てたというのに・・




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