*お向かい彼氏*




「うわー、ひかるってほんとに料理できたんだ」


「ちょっと、どういう意味?」



人生でいちばん愛情込めて作った生姜焼きかもしれない。



ほかにもお味噌汁、おひたし、軽い煮物も作ってなんだか気合い入りすぎ?



てかめっちゃ和食すぎ?



友達と外食すると和食って食べる機会が少ないから、自炊はそっちに偏りがちなんだよねえ…



「いただきまーす!」



最初に光輝が手をつけたのはもちろん生姜焼き。



「…うま!味、すごい俺好み」



自分は食べずにただ目の前の恋人を見つめる。




あー、なんかこういうのいいなあ。



昔はお母さんと食べる日もあったけど美味しいなんて言われたことないし、


巧にも作ったことなかったからなー…



密かにバイトで腕は磨いてたけどね。



「光輝」


「んー?」


ご飯とおかずを交互に頬張りながら目線をこちらに向ける。



「これからたくさん作ってあげるね」


「マジで?毎日でも食いたいよ、俺」


「嬉しい…ありがとう」



あたしも、毎日でも作ってあげたいよ。


現実的には無理だけど…それでも、出来る限り作ろう。




そして、光輝と2人で洗い物をしてソファで並んでテレビを見ている時。




「あ、そうだひかる、これ」


ぽとりと、膝になにかを落とされる。



「…え、これって」



「うちの鍵、昔と違って会える時間も減ったし…あれば便利かなって思って」


「…」


「……重かった?」




心配そうに覗き込む光輝の首に手をまわす。


「…うれしい」



ほんとに、嬉しい


想いが溢れそうになって、唇に乗せた



ーちゅ



「ひ、ひかる」



「大好き、光輝、ほんとに好き、ありがとう…」



「…喜んでくれてよかった」



あたしの大好きな優しい笑み。



堪らなくて、もう一度、唇を重ねようとする。



「…ちょーっと待って、ひかる、今すると俺…」



「…なーに?キス、したいよ」



「だから!あー、と、我慢できなくなるからさ」



目をそらしながらつぶやかれた内容に頭がぼっとなる。


それって…あたしに欲情してくれてる?



モヤモヤしてたけど…いざそう言われると、してもいいかなって気になってきた。





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