最愛レプリカ
ぐるぐると頭を巡らせながら、やっと出てきた一言。


「……平気。慣れた。」


私の返答はまるで音に乗せた鼻唄みたいに、紛れて消えた。

津村は何も言わなかったけれど、寂しそうな顔をしていたことは分かる。


私は家のすぐ近くまで来たので、適当な場所に停めて貰って車を降りた。


「ありがと、先生。」


突然津村が窓から手を出して紙切れを差し出した。

見るとそこには走り書きされた11桁の数字が並んでいた。


「…何これ?」


私が問うと津村はまた眩しく笑った。


「俺の番号!また息詰まった時とか、ラーメン食いたい時にかけて来い!」
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