アカイ花†Vermilion Flower

外れた鎖†もう一つの恋


私が事故に合った時に助けてくれた人は、浅緋の友人の紫藤いずるさんで、私も数回お会いしたことはあったけれど、近寄りがたい感じの人で挨拶以外話したことはなかった。

紫藤さんのおかげで私は一命を取りとめ、しばらくの入院生活を余儀なくされた。

入院生活は、怪我を治療して痛みさえ引けば、検査検査の毎日で病室に居ること事態が窮屈で息が詰まりそうだった。

そんな私の元へ毎日お見舞いに来てくれる、いずるさん。

きっと不器用で人付き合いなどしないだろう性格の人だと思うのに、顔は例え知っていても話したことも無い私のところへ仕事の合間に通って来てくれて、デザートを片手にニッコリ微笑んでくれる。

面白みの無い空間に、彼の存在があるだけで私は何だか嬉しく、そして楽しかった。

でも、ふと見せる彼の横顔、その印象は、生きることに無気力な感じがした。

私の命を救い、退院後はこちらから頼んだ訳でもないのに病院まで付き添ってくれるとても優しい彼だけど、自分のことには無頓着で生きることに疲れている様だった。


「いずるさん
 今日も、ありがとうございました

 あの、私はもう
 一人でも大丈夫・・・」


私の鞄をサッとその手に持ってくれる、いずるさん。
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