アカイ花†Vermilion Flower

「行こう」


彼の袖を捲くった腕は細く、手首なんて女の私と同じくらい・・・

伸びたままの真っ直ぐな黒髪が肩に触れそう。


「いずるさん、あの
 あそこで何か食べませんか?

 私、朝から何も食べてなくて・・・」


二人で初めて入ったレストラン。

いずるさんは、頼んだ料理に少し口をつけたかと思うとすぐにお箸を置いた。


「もう、食べないんですか?」

「ああ、うん・・・」


親しくなる度に見えてくる、彼の荒んだ生活、寂れた心。

そんな彼を、一人にはしておけない。

私は母性的な愛で、彼を包んであげたいと思った。

陰の部分を持つ魅力的な彼に恋心を抱いた私は、いずるさんに急速に魅かれていった。
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