瀬々悠の裏事情
その言葉に母の標的はアリアから陽一に移る。
それから陽一に対して恨み言を散々浴びせた後、母はその場を去っていった。
離れたのをみて、座り込む陽一にアリアは素早く寄り添う。
「ごめんなさい、陽一。お母様の言うことなんて気にしなくていいわ」
「ありがとう。でも仕方のないことだし、もう慣れてるから」
ただ笑う陽一にアリアは何とも言えない複雑な表情を浮かべる。
それが何を意味しているか、陽一はおおよそ察することはできたが、かと言って言葉にはする
ことはしない。
「それより俺の事を庇う必要ないよ。最近、母上とずっと言い合いしているでしょう」
「ええ……でもそれはあなた達のことではないわ」
歯切れが悪そうに答えるアリアだが、彼女が言っていることは事実だろう。
自分には彼女を含めて三人の姉がいるが、その中でもアリアは主張が強い。
母と衝突する回数は他姉との比べようもないほど多く、何度か目にしている。
「月子はどこへ行ってしまったのかしらね…」
「………」
アリアの問いに口を閉ざしたまま、陽一は立ち上がる。
「部屋に戻るよ。月子はちゃんと見つけるから」
「あ、陽一」
呼び止める姉を見る。
「お母様が何を言っても、私にとって陽一と月子は大切な弟と妹よ。それだけは……忘れないでね」
控え目ながらも伝えられえたその言葉に、陽一は答えるように笑みを浮かべた。
.
