瀬々悠の裏事情


その言葉に母の標的はアリアから陽一に移る。
それから陽一に対して恨み言を散々浴びせた後、母はその場を去っていった。
離れたのをみて、座り込む陽一にアリアは素早く寄り添う。


「ごめんなさい、陽一。お母様の言うことなんて気にしなくていいわ」

「ありがとう。でも仕方のないことだし、もう慣れてるから」


ただ笑う陽一にアリアは何とも言えない複雑な表情を浮かべる。
それが何を意味しているか、陽一はおおよそ察することはできたが、かと言って言葉にはする
ことはしない。


「それより俺の事を庇う必要ないよ。最近、母上とずっと言い合いしているでしょう」

「ええ……でもそれはあなた達のことではないわ」


歯切れが悪そうに答えるアリアだが、彼女が言っていることは事実だろう。
自分には彼女を含めて三人の姉がいるが、その中でもアリアは主張が強い。
母と衝突する回数は他姉との比べようもないほど多く、何度か目にしている。


「月子はどこへ行ってしまったのかしらね…」

「………」


アリアの問いに口を閉ざしたまま、陽一は立ち上がる。


「部屋に戻るよ。月子はちゃんと見つけるから」

「あ、陽一」


呼び止める姉を見る。


「お母様が何を言っても、私にとって陽一と月子は大切な弟と妹よ。それだけは……忘れないでね」


控え目ながらも伝えられえたその言葉に、陽一は答えるように笑みを浮かべた。

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世界の表側では 人間という普通の存在が 堂々と生きている。 そして 世界の裏側には 異能者という異端な存在が 密かに生きている。 そんな世界の裏側で 堂々と生きるヤツらがいた。 憂悶少女 悩める少年 氷の美少女 従順な付人 楽天主義三男 気紛れ女 孤高の狼 閉心道化師 幽閉の寵姫 先見的青年 変質者 今回の主役だ。 start2012年03月23日 finish2014年05月18日 祝☆読者数80人突破!! ファン登録、読者登録 してくださった方々 本当にありがとうございます。 ★あずきバー様★ ☆叶 遥斗様☆ ★aona様★ ☆熊川なおたか様☆ レビューありがとうございました! ※現在、誤字・脱字修正中 .

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