オレンジ
俺は、折れそうなえーりの細い腕を放した。
えーりは目をそらすことなく、俺を見つめる。
えーりから表情は読めない。
えーりがなにを思っているのか、俺はわからない。
悲しいのか、うれしいのか。
そしてこれが、いい判断なのかわからない。
「俺はなるべくお前に近づかないようにする」
「…むりだよ。あたし、晩ご飯食べに来れなくなる…」
初めて、えーりの瞳がゆれた。
えーりの眉が、八の字になる。
いつもの強い瞳がなくなる。
俺たちは親友なんだからいつもどおりにしてればいい。
でも、いつもどおり、なんて俺のほうがむりなんだ。
今までになかったよくわからない感情が俺の中に渦巻く。
こんな顔をさせたいわけじゃないんだ。
好きなひとと、えーりがうまくいってほしいからなんだ。
「ご飯は、いつもどーりでいいから。けんかでもないから。
俺は、お前を嫌いになったわけじゃないから」
むりやり笑って、えーりの頭に俺の手を置いた。