今日も、明日も、明後日も



「『大丈夫?痛そうに、うちすぐ近くだからよかったら休んでいきな』って。あのときはさすがにびっくりしたね。血まみれでどう見てもガラの悪いガキに普通声なんてかけないし」

「……おばあちゃんらしい」



お節介なおばあちゃんのことだ。相手が『放っておけ』と突っぱねたとしても、笑顔で『放っておけるわけないじゃない』と腕を引っ張って家まで連れて来てしまうのが想像つく。



「その時に俺も言ったんだよ。『こんな見ず知らずの奴家に上げたりして、俺が強盗でもしたらどうすんの』、って」

「そしたらおばあちゃん、『そのときはそのときだよ』って、言いませんでした?」



ぼそ、と私が呟いた一言に伊織さんは驚いた顔でこちらを見た。



「え?なんでわかったの?」

「おばあちゃんの口癖でしたから。いつでもなんでも『そのときはそのとき』って。あれを言われちゃうと、悩むのがアホらしくなってくるんですよね」

「そうそう!『そんなことより、ご近所さんから貰った甘いトウモロコシがあるから一緒に食べない?』なんて言われてさ。この人はきっと、ただ単に“いい人”なんだろうなって、折れた」



『もしもを考えるより、自分の思ったままに動く。その方がきっと、自分らしく生きられる』



私が悩んだときも、いつもそう言って背中を押してくれた。その言葉はきっと、彼の心にも今だに響き続けているのだろう。



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