今日も、明日も、明後日も



オフィス街から離れてしまえば、そこは閑静な住宅街。ずらりと並ぶのは大きなマンションや、綺麗な色をした壁や屋根の新築の家ばかり。その中を一本細道に入れば、昔からこの地に住む人々が住む少し古びた家々がある。

そのうちの一軒、小さくはない日本家屋。黒い屋根と少し汚れた茶色い外壁、小さな庭には花が沢山咲いている。表札に『野崎』と書かれたこの家が、私の家。



ガチャガチャと鍵を開け、少し重い引き戸をガラ……と開けると、目の前は真っ暗な廊下。無駄に広い玄関が不気味さを感じさせるけれど、長く住んでいればそれももう見慣れたもので、パンプスを脱ぎ捨て家へあがった。



「ただいまー……」



って、誰もいないんだけど。

心の中でひとり呟き、居間の電気をパチとつけると一瞬にして広がる畳の敷かれた広い部屋。茶色い大きなテーブルが真ん中に置かれ、棚やテレビ、座椅子などがある至って普通の居間だ。

そのなかの一番奥にある、仏壇。そこに飾られているのは、話に聞いたことがある程度の先祖や私が生まれる前に亡くなったという祖父の、いずれも年代を感じさせる古い写真。そのなかで一際真新しい写真が一枚だけある。

そこに写るのは、優しく笑う祖母の姿。


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