バーテンダー

帰り際にその彼にニコリと笑って会釈をし、警察署を後にした。


何度か裸で抱き合った男……


わたしにとって今の時点では最初で最後の人になっている。


相手の勤務先だから仕方ないが、まさか、こちらに帰って来ているとは思わなかった。


その日アパートに帰り、ボンヤリと彼のことを考えた。


あの頃より清々しい感じになっていて、好感が持てた。


わたしと別れてから彼にも別の時間が流れた。


彼をあのように変えさせたものは何だろう。


別の誰かと結婚して、既に家庭を持ったのかもしれない。


彼は、変わらないわたしの姓を見てどう思っただろう。


そう思うと失恋ではない、何か虚しいものが込み上げてきた。


二日前に見た華やかな世界の夢と、現実との違いが頭の中に交互に現れて、その夜は眠れなかった。


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